労働災害
労働者災害-訴訟編
話合いによる解決は好ましい事が多い~どのように解決を図っていくか~
(1)話合いによる示談交渉-合意書を取り交わして終結
話合いによる解決は、理論的に賠償金額が幾らが適切なのかをさておいて、例えば、労災を出してしまった会社が被災労働者の再雇用に応じ、定年退職までの勤務を約束する代わりに、被災労働者は、(再雇用の約束が果たされた事を条件として)将来分の逸失利益の金額を減額するなど、早期に、柔軟な解決が期待できる点です。
例えば、とある事例では、賠償金額の合計を3500万円として合意しつつ、逸失利益以外の金員を一括で合意時に支払いながら、逸失利益については分割払いとし、再雇用が果たされた月ごとに免除支払いを免除し、再雇用の約束が守られなかった時点で残金を一括払いとするという合意を事業主と保証人との間で取り交わすということで、会社の資金繰りと賠償金の支払いとの調整を図ること等が考えられます。
話合いによる解決は好ましい事が多い
(2)各当事者(事業主・労働者)がしておくべき努力
話合いで解決を指向するにしても、事実関係を整理しておくことが必要です。
例えば、解決を図っていくうえでは、
1、被災状況の把握(双方の過失の有無、過失割合が問題となるため)
2、労災給付の受給状況(はがきや書類)の保管(損害額の算定、既払い金を把握するため)
3、被災者の収入や家庭の状況などの把握(基礎収入を把握するため)
4、病院までの交通費や宿泊費、治療費などの把握(損害額の計算や、立替金として事業主が負担すべきか議論の対象となりうるため)
5、松葉杖や薬など事故によって発生した支出の領収証などの整理・保管(損害額計算のため)
6、可能であれば警察、労働基準監督署とは別に、事業主・被災者独自の事故状況の把握
(調査内容を書面にまとめて、調査をした人間や、事故現認者の署名捺印を確保しておくことで書面の信用性を確保しておくこと方が好ましいでしょう)
7、被災者の元々の生活水準(元の生活水準を維持できるように双方配慮、支援する)
話合いを始めるに際し、上記の様な事実関係を整理しておくべきです。
最終的に当事者間での話合いによって折り合いがつけば、合意書を取り交わして解決を図り、被災労働者の新生活スタートを支援すべきです。